非地震性すべりの加速
「非地震性すべり(aseismic slip)の加速」について解説します。
簡単に言うと、これは「地震のように岩盤が急激に壊れる(地震波を出す)わけではないが、断層面がゆっくりと動き、その動きが徐々に速くなっていく現象」のことです。
この現象は、将来の大きな地震の発生プロセスを理解する上で非常に重要な手がかりとされています。
1. 「非地震性すべり」とは何か?
通常、プレート境界や断層は強い力で固着していますが、場所によっては「ゆっくりと」滑り続けているところがあります。
スロースリップ(ゆっくりすべり): 数日〜数ヶ月かけてじわじわと滑る現象。
定常的なクリープ: 長い年月をかけて安定して滑り続ける現象。
これらは地震波をほとんど放出しないため、「非地震性」と呼ばれます。
2. なぜ「加速」が注目されるのか?
非地震性すべりが加速するということは、「断層にかかる歪み(ひずみ)の解消が速まっている」、あるいは「断層がより大きな破壊(大地震)に向けた準備段階に入っている可能性がある」ことを示唆するためです。
具体的には以下のような理由で重要視されています。
巨大地震の予兆: 過去の事例(例:2011年東北地方太平洋沖地震など)では、本震の前に長期間にわたるすべりの加速や、複数のスロースリップが観測されました。
応力の伝播: すべりが加速することで、その周辺にある「まだ動いていない固着域(アスペリティ)」に余計な力が押し付けられ、そこが破壊される引き金になることがあります。
臨界点への接近: 断層が不安定になる限界(臨界点)に近づく際、滑りの速度が物理学的に加速することが知られており、大地震発生の「核形成」プロセスを観察している可能性があります。
3. 加速する仕組み
摩擦の性質(速度弱化・速度強化)が深く関わっています。
速度弱化(Velocity Weakening): 滑るほど摩擦が小さくなる性質。これが広範囲で支配的になると、滑りが暴走して地震になります。
加速のプロセス: 何らかの理由(地下水の浸透、周囲の応力変化など)ですべりが始まり、それが自己増殖的に速度を増すと、周囲の断層への負担が増加します。この加速が「臨界長さ」を超えると、一気に地震性(破壊的)なすべりへと転じます。
まとめ:観測と防災への応用
近年では、GNSS(GPS)観測や「繰り返し地震」の発生間隔の変化を解析することで、この加速を検知する研究が進んでいます。
注意点: 非地震性すべりの加速が必ずしも「直後の巨大地震」に結びつくとは限りません。加速したまま止まるケースや、数年単位でゆっくり進行するケースも多いため、現状では「大地震の発生確率が高まっている可能性を示す一つのサイン」として慎重にモニタリングされています。
外部リンク
https://weathernews.jp/news/202605/150191/
三陸沖でスロースリップが加速 大きな地震につながる懸念
外部リンク
https://www.jishin.go.jp/
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2026/20260420_off_sanriku_2.pdf
2026年05月14日 2026年4月20日三陸沖の地震の評価(令和8年5月14日公表)
令和 8 年 5 月 14 日
地震調査研究推進本部
地震調査委員会
今回の地震活動域周辺では、2025 年 11 月4日の三陸沖の地震(M5.3)が発生し
て以降、微動活動が断続的に継続していた。M7.7 の地震以降、M7.7 の震央の東側
で微動活動が活発になっている。今回の地震活動域の周辺では、繰り返し地震か
ら推定された非地震性すべりの加速も見られている。
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2025/20251208_off_aomori_2.pdf
2025年12月8日 青森県東方沖の地震の評価
外部リンク
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/kenshin/vol63p017.pdf
体積歪計観測網による東海地震の前兆すべりの検知能力
https://cais.gsi.go.jp/YOCHIREN/report/kaihou83/12_04.pdf
十勝沖地震震源域における非定常なプレート間すべり
https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/yosoku/pdf/20130528yosoku_s11.pdf
2011 年東北地方太平洋沖地震前に見られた前兆的現象
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F8766913&contentNo=1
地震時滑りと非地震性滑りの相補関係
https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/people/akato/research_contents.html
東京大学 地震研究所 加藤愛太郎 研究室
https://terras.gsi.go.jp/
GNSS観測
JMAの歪計データ
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/nteq/strainmeter.html